今、多くの企業で「技能・技術伝承」に関する問題が発生しています。
少子高齢化が加速し、人口減少・労働力減少していく日本国内において、ものづくり産業やサービス産業の現場力を維持・向上させていくためには、人材の育成の仕組みが欠かせません。高度なものづくり技能やサービス技能の喪失が懸念されている中で、有形・無形の「現場力」を後世に残すための技能・技術伝承が必要不可欠です。
本稿では、技能・技術伝承とは何か?を解説し、効率的に進める方法は何か?についてご紹介します。
技能・技術伝承とは何か?
言葉だけを取って考えると「技能・技術を後継者に伝承すること」と理解できます。果たして、この解釈だけで十分なのでしょうか?もちろん違います。技能・技術伝承という言葉の意味をより深く知ることで、この問題を解決する糸口が見つかるはずです。まずは、技術と技能の違いから確認してみましょう。
技能=技術を上手く使いこなすための能力
技術=物事を上手く行うための方法・手段
技術は、言語化・文書化された知識を持って習得できるものを指します。たとえば製造業において、生産ラインに置かれている作業マニュアルがそれに該当します。作業マニュアルに記されていることは、「読んだ頭で理解する」ことで習得が可能です。
一方、技能を習得するのには経験が必要になります。「センス」や「感覚」と言い換えると分かりやすいかもしれません。たとえば、作業マニュアルの内容が完璧に頭に入っている場合でも、新人社員と熟練社員では作業スピードや完成品の質に差があります。これは熟練社員には技能が養われており、新人社員にはそれが無いためです。
それでは、「技能・技術伝承とは何か?」の話に戻っていきます。前述した技能・技術を後継者に伝承することとしか理解しないでいる場合、大方はOJT(現場教育)での伝承を進めてしまいがちです。
OJTが悪いと言っているのではなく、「技能・技術伝承=OJT」と認識しているのが問題です。企業が保有する技能・技術には必ず「暗黙知」があります。暗黙知とは、熟練社員の中に積み上げられた経験と、そこから来る勘や、本人は意識すらしていないコツなどのことです。これらは企業にとっての無形資産とも言えます。
皆さんは何かしら料理をされたことがあるでしょう。中には、「おふくろの味」を再現したいと母親からレシピを教わり、挑戦したことがある方も多いかと思います。おそらくですが、大半の方は「おふくろの味」がどうしても再現できないのではないでしょうか?そこには「暗黙知」と呼ばれる、本人だけが知り得る勘やコツ、経験から来る技能が自分には備わっていないからです。
このことから、「技能・技術伝承とは、OJTなどで作業内容を教えるような単純なものではない」と理解できます。
技能・技術伝承の本質
結局のところ、技能・技術伝承とは何か?というと、それは「明瞭化」と「創造」、そして「育成」という3つのキーワードに集約されています。
技能・技術伝承の明瞭化
ビジネスの根幹とは「競合他社との差別化をもたらす、企業固有の技能・技術」だと言えます。そして技能・技術伝承の対象になるものこそ、そうした固有の技能・技術です。これらは決してアウトソーシングするのではなく、企業のビジネスに欠かせない技能・技術として温存し、発展させていくことが大切です。
大半の技能・技術というのは熟練社員に温存されているものであって、これを他者に伝承することは容易ではありません。ところが、そうした暗黙知を明確にすることは、簡単ではありませんが可能です。
要するに、企業固有の技能・技術を明瞭化することが「技能・技術伝承の第一歩」となります。
技能・技術伝承の創造
「伝承」という言葉には「古くから受け継がれてきた伝統を受け継ぐ」という意味がありますから、企業が古くから固有している技能・技術を次の世代にバトンタッチすることと解釈している方が多いかもしれません。実は、大きな誤解です。
ビジネスで扱う技術・技能というのは、時代と共に大きく変化しています。たとえば、1800年代後半~1900年代長ごろまでビジネス文書の主流として使われたタイプライターを、今でも使っている企業はいません。
パソコンが登場し、ワープロが開発され、タイプライターに必要とされていた技能・技術はすっかりすたれています。ただし、完全にではありません。タイプライターには現在のキーボードに採用されているQWERTY配列が使われていましたし、文字入力のための機械がキーボードに代わり、文字の出力先が紙からパソコン画面に代わったのです。
このように、時代と共に技能・技術は変化していきます。となれば、技能・技術伝承は古い技能・技術をそのまま伝承していくのではなく、現代化させ、新しい技能・技術を創造していくことも含まれています。
技能・技術伝承の育成
「育成」というのは、単に技能・技術を次世代にバトンタッチするのではなく、「今の指導者を超える新しい指導者を育成し続ける」という意味です。熟練社員と同じ歳月を技能・技術の習得に費やしていると、「創造」にかける時間が少なくなり、その技能・技術は停滞することになります。
次世代の指導者は、今の指導者を越える存在でなくてはいけません。「自らを越えていく後継者を生み出すこと」、これが技能・技術伝承における育成です。
技能・技術伝承を効率よく進めるには?
前提として理解いただきたいのは、「技能・技術伝承に近道はない」ことです。ビジネスにかける時間を減らしたくないといった理由から、手っ取り早く伝承するためにOJTに固執してしまうと、かえって技能・技術伝承が進まない傾向にあります。
前述のように、大切なのは「技能・技術の明瞭化」です。企業固有の技能・技術とはなにか?その強みとは何か?それを有している人材は誰か?どんな暗黙知があるか?どうやって明確にするか?このことを真剣に考え、明瞭化を実施しなければ技能・技術伝承は成功しません。
この意識に加えて、「様々なコンテンツを活用する」ことが効率よく進める大きなポイントになります。技能・技術伝承にあたって紙文書や紙マニュアルなどを作成しますが、テキスト以外のコンテンツが豊富な世の中において、それはあまりに限定的な手段です。
今では、その技能・技術を伝承するために多くの企業が映像に残すことを選択しています。映像にすることで伝えられる情報量の多さから、ちょっとしたニュアンスの違いや雰囲気などを正確に伝えることが可能になります。
企業は、技能・技術の種類に応じて適切なコンテンツを見極めて、様々なコンテンツを活用した技能・技術伝承を効率的に進めることが重要なのです。もし、技能・技術伝承に映像の力が必要であれば是非とも弊社ヒューマンセントリックス までお問い合わせいただければ幸いです。
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